*身体論ノート*

自分らしく生きる 身体と心の整理術まとめ

筋膜(ファシア)と感情とピラティスについての考察

先日テレビで筋膜(ファシア)が取り上げられている番組を見ました。以前勉強したことの備忘録として書いてみました。

 

 

 

筋膜とは?

 

筋膜とは第二の骨格とも言われ、頭の天辺から足の先までネット状の繊維で覆い、筋膜を介し身体の内側の骨や筋肉、内臓、神経、血管などを支えています。

くもの巣のように身体中に張り巡らされています。鳥や豚肉などの生肉には透明な薄い膜につつまれているのを見ることができます。

 

筋膜の位置

 

身体は表面から順に表皮、真皮、皮下組織、筋肉の順となります。

皮下組織は浅筋膜に含まれ、筋束の束を深筋膜が覆い、各筋束を覆うといった多重構造をしています。

浅筋膜は毛根より深く、美容ローラーで顔をマッサージするときにほぐすような浅い場所、深筋膜は筋肉の表面ですのでそれよりも深い場所にあります。

 

筋肉はよくゴムバンドのように伸び縮みする素材に例えられます。(筋肉は自分で縮むことはできるが伸びることはできない。)

しかし、それらが重なり合って運動を起こしていると考えると、ゴムバンドがこすれ合ってお互いを邪魔し合ってしまっては正しい運動が起こりません。

よって、この筋膜が筋肉の束を覆うように張り巡らされていることで、筋肉同士がスライドする隙間をつくっています。

 

筋膜の性質・メカニズム

 

筋膜は膠原繊維(コラーゲン)という膜に強度と形態保持を与えるものと、形態記憶と伸張性を与える弾性繊維(エラスチン)から構成されます。

コラーゲンは柔軟で丈夫ですが伸張性は乏しく、

エラスチンは繊維というよりも均一なタンパク質からできていて収縮性があり引き伸ばすことができます。

よって、筋膜は伸張性のないスジのような繊維とゴムのような伸張性のある繊維からなっています。

この二つの繊維が網目状にからまってなる筋膜の隙間には、細胞間基質という水溶液状のさらさらした水みたいなものがあります。

しかし、なんらかの原因でこの網目状が高密度化すると細胞間基質は脱水してその成分がゼラチンのようにドロドロしたものに変化し筋膜の動きが悪くなるというメカニズムです。

 

ゴムバンドを重ねたまま直射日光をが当たる場所に放置した場合、それぞれが硬く硬直して、くっついてしまい剥がせなくなってします。

筋肉と言ったら太いチューブが伸び縮みしているような動きしか連想しませんが、筋肉は筋肉の上をスライドするという認識で身体をとらえるとよりスムーズな動き、感覚に導くことができます。

筋膜と感情の深い関係

筋膜は事故や精神的なショックなどの外的エネルギーが筋膜組織に吸収されカセットテープのように記憶されると考えられている。これをティッシュモリーといいます。

交通事故の後、同じ場所を通ると身体が硬直したり、苦手な人の前で身構えてしまうといった現象。これは情緒的ストレスが身体に緊張をもたらすように、身体的なストレスが情緒面での緊張を作り出すといえます。

身体的緊張を筋膜組織からリリースしていくことで、情緒的にも解放されていきやすくなります。

 

 筋膜は腹部の臓器にもつながります。腹部の筋膜は(腹膜)は体表面積とほぼ同じおおきさとのことです。例えば腸腰筋は横隔膜と筋膜で連結しているため呼吸の機能が下肢と連携しているということがわかります。

 

また私の個人的な体験ですが、ストレスやお酒の飲みすぎなどで肝臓に負担がかかると、横隔膜のすぐ下にある肝臓が硬直します。横隔膜の上下運動が減少するとともの右側の肋間神経の働きも悪くなり呼吸の左右差が生まれます。

肝臓は人体の右半身に位置するため右肩と右骨盤が肝臓に向かって引っ張られてねじれる姿勢が生まれます。

これは一例ですが、ストレスなどの感情や、怪我などで筋膜の配列が崩れた時に他の部位に影響が出るということも、筋膜の流れを考えると理解できます。

 

そして、身体と感情(心)の接点に筋膜があると考えると面白いですね。

フロイトの「意識の階層」のように身体の意識も階層で例えられるかもしれません。

 

筋肉、関節という大きな動きの感覚の階層、第一層目を理解し、

筋膜というより繊細な第二層目の身体意識を得る。

より繊細な第三層目の皮膚の感覚、

さらにそれを超え呼吸という形のない外部環境との接点としての身体を感じていく。

より大きなものとのつながりの中に自分を感じる事ができる。

 

筋膜は身体と心、自己と他の境界を表現しているものかもしれません。

 

 

身体の捉え方・意識改革

西洋医学、解剖学では「上腕二頭筋」というように、人の身体にメスを入れ、自律神経や末梢神経、血管、筋肉を覆う筋膜をすべて取り除いた独立した部品として考えています。

 

 このような西洋で発展した、1つの筋がそれだけで動作する骨格に対しどのように作用するかという単一筋理論的な考えで人の身体をみると「身体が組み立てられた機械である」というような考えになってしますい、実際の生きている人間をとらえることができなくなります。

 

テンセグリティー(tensegrity)という造語があります。tensionとintegrity(テンションとインテグリティー)。テンセグリティー構造は応力を加えると、ひずみを集中させるのではなく、むしろ分散させる傾向がある、身体でも同じことが起こるため局部的な損傷がすぐに全体的なひずみパターンになるという理論です。

 

ということは逆も言えると考えられます。局部的な完全が身体から一番遠い場所に起こる、または全体的な改善が起こるという事。これのよって部品からできた機械という考え方を変えることができます。

 

樹木は一つの種子から芽を出し、根から葉まで相互に作用するシステムであり一体である。それ自体がひとつながりの分けることができないものである。

 

野口体操で有名な野口三千三氏は身体は水の入った袋の中に臓器や骨が浮かんでいるといっています。

 

ピラティスの第2世代イブ・ジェントリーもPlacement(配置)ではなく、Float(浮く)という表現を使い身体をとらえています。

 

ピラティスが生まれた当時にこの筋膜は深く研究、明らかにされていない時代だったと推測します。しかし、理論があるから身体が感じるのではありません。何よりも先に生きている自分の身体が感じるのです。

感じる事を後々、医学的、解剖学的に謎解きをして正確な証拠がみつかった時、それは学問になります。

 

理論がない、またはそれほど重要視されていない身体の感覚に対しての証拠が現代医学で解明されるより、何十年、何千年と前から人の身体にはその組織が備わっています。そしてそれを理解して感じていた人々がいた。チャクラや気、プラナ、マナ、スピリット。

 

現代ではむしろ情報の出どころが正しいか否かに基準がおかれ、自分の身体をとおして、感覚をとおして感じるということが希薄になってきています。

情報として正確なものを取り入れたいという反面、ネットやTVという情報過多な時代。自分の身体で感じて確かめるという本来備わった機能を使う機会が少なくなっています。

 

理論が無い時代でも身体の感覚として確実に存在した身体感覚。

自分の身体の感覚を大切にしたいですし、ピラティスを通して現代に人間本来の感覚を取り戻すことができればと思っています。

 

筋膜を意識したピラティス

 

筋肉は平面状の一枚でつながられた部品ではないですから、何層にも折り重なり、その間には筋膜があり、それぞれがスライドするように動きます。

ピラティスのエクササイズの際も、筋肉を意識した指導、骨、関節を意識した指導、はたまた筋膜を意識した指導と目的とアプローチにより受け手の感覚にも変化を及ぼすことができるはずです。

 

短縮した筋膜を伸張して解放するには90秒以上の時間を必要とします。

 

ピラティスはムーブメント(動き)ですので、筋膜をリリースするということは難しいかもしれません。しかし、筋膜のつながりを応用したムーブメント、感覚の提供は可能です。

 

筋肉の収縮をもたらしたいのか、筋膜を意識した動きにしたいか、または筋肉の過剰な緊張を防ぐため骨の動きを意識して動くのか。インストラクターは目的をもつことで指導に応用ができるようになります。

 

まとめ

 

筋膜という概念はまだまだ新しい学問のようです。一般の方にはイメージできても感覚として信じがたい、つかみどころのないものです。

筋膜の施術などは現在はネットで検索したらたくさ出てくるはずですので、気になる方は体験してみることをオススメします。

 

今回の筋膜のように、身体の概念は時代とともに明らかになり、アップデートされていきます。今の常識が5年もしたら古い情報に変わります。

 

自分の身体の個性を知り、コントロールするすべを知っておく、身体の認識をアップデートしていくことはPCやiphoneのアップデート同じように必要かと感じます。

ですので、ピラティスやヨガなどの自分を知るためのボディワークを取り入れていくことをオススメします。